vor.26 アルバートとマリー ③
まるで悲鳴のように泣き叫ぶアルバート。 激しい感情が火柱のように彼を包んでいました。
怒り、悲しみ、絶望が入り混じっています。
マリーは、何か言葉をかけたくてもかけられません・・・
彼の感情の波がマリーの方にも押し寄せてきます。 マリーも辛くてしかたありません。
何もできなくて、ただ見ているしかありませんでした。
私の横の小さな光が私の周りをクルッと一周しました。 マリーはハッとしました。
私の赤ちゃんだけでも 光に戻ってもらおう・・・
赤ちゃんに「あなただけでも光に戻って」 と声をかけました。 赤ちゃんの声は聞こえません。
しかし、赤ちゃんは光のまま、私の側からいっこうに動こうとしませんでした。
「あなたも一緒にいたいんだね ? 」 すると、さっきまで上空にあった大きな光はスーッと消えていきました。 マリーと赤ちゃんは、アルバートを見守ろうと決めました。
叫び続けたためにアルバートの声はつぶれていました。 服も血だらけです。
ヒューヒューと、うまく呼吸もできていないようです。
マリーと赤ちゃんはアルバートの横にいて彼に抱きつこうとするのですが、抱きつくことが出来ませんでした。 肉体のないことを悔しく思いました。
それから何時間たってもアルバートは動きませんでした。 冷たくなったマリーの肉体をずっと抱きしめています。 目はぼんやりして 全く生気を感じられません。
しばらくして村の人が数名通りかかり、現状を察してアルバートに私の亡骸を家に連れて帰ろうと説得しました。 けれど、アルバートの反応はありません。 村人がアルバートの手から私を引き離そうとした時、「触るな ! ! ! ! ! 」と 急に暴れだしました。
まるで、追い込まれて殺気立っている獣のようでした。
マリーは物静かで優しく穏やかだったアルバートしか知りませんでした。
マリーの悲しみはより深まりました。 アルバートは数名に抑えられ、私を取りあげられたと怒り狂っていました。 「私はここにいるよ ! !ここにいるんだよ ! ! ! ! 」 大声で叫びました。
しかし、私の声はアルバートには届きませんでした。
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