vor.27 アルバートとマリー ④
マリーを感じている現在の私は、アルバートの様子を見て胸が押しつぶれそうな思いです。
でも、もう一人の冷静な私もいて、ひとつの物語を見ているような・・・
アルバートがそんなに私を思っていてくれたんだ・・・と、なんだか嬉しくなっている自分がいました。 こんなことを思ってしまうなんて、不謹慎な感じもするのですが・・・
村の人は、アルバートを何とかなだめ、私達は家に戻ってきました。
アルバートは何もしゃべらず、私の側を片時も離れません。
親しい人や近所の人達も集まってきました。
不思議なことに、マリーはその人達の気持ちが分かってくるのです。
「かわいそうに・・・」 「まだ若いのに」 「もうすぐ赤ちゃんが生まれるはずだったのに」と、悲しんでくれる声。 中には、「なぜこいつ(アルバート)がついていて守ってやることができなかったんだ」という怒りの声も。 けれど、アルバートの声は全く聞こえませんでした。 無言です。
何も感じていない放心状態になっています。 女達は私の体を綺麗にしてくれています。
布で私の血を拭き、服も着替えさせてくれます。 男達は全員外に出ています。
アルバートは側にいます。 顔の周りを花がいっぱいです。 男達は私の墓を掘りにいったようです。
そのうちの何人かは、棺を教会までもらいに行ったようです。
淡々とお葬式の準備が進められていました。 一通り終わると、全員私の手にキスをして帰りました。
次にマリーのお葬式の場面と移りました。 少し高台にある墓地です。 周りは木の十字架の墓標があちこち無造作にあります。
【現在の私】日本のお墓はきちんと並べられているのに、この時代は空いている場所から埋めている感じだな~
マリーの魂は上空からその経緯を見ています。 現在の私の意識はマリーの中にいます。
神父様がなにか話をしています。何人か棺の周りにいます。
どうやらアルバートの身内という気がしてきます。 アルバートは喪服を着て、マリーの棺をぼんやり見ています。 目はうつろです。誰が声をかけても全く反応しません。
マリーの感情が私の中で動きます。 「自分のせいだ・・・愛する人にこんな悲しい思いをさせて・・・ 私が死んじゃったばっかりに・・・」 マリーが泣いているのが分かりました。
現在の私も泣きたくなりました。
私の棺に土が被さられます。 すべて終わってもアルバートはそこから動きませんでした。
アルバートだけ時間が止まっているようでした。
【現在の私】これからアルバートはどうなっちゃうんだろう ?
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