vor.36 ピエールとアンジェラ ②
場面は町の広場からまた戦の最中に戻りました。
敵に攻め込まれて、かなり切迫している様子を感じました。 混乱していて、うまく考えられません。
いつもよりひしめき合って戦っています。
思わず味方に刃を向けてしまいそうなくらい近くで戦っています。
自分の呼吸がやけにうるさく感じました。 その反面、周りはなぜか不思議と静かです。
目の前の敵を蹴り倒しました。 チャンスだと思い剣を振り上げた時、 左の手首に何かが当たって、初めは手がはじかれたと思いました。 その瞬間脈打つような鋭い痛みが走りました。
左手を見ると皮一枚でつながっている状態です。 体験の中で実際に痛みは感じていませんでした。
ただそれがどんな痛みだったのか不思議と分かってくるのです。
後ろを振り返ると、どうやら後方の敵の斧に切られたようです。
「しまった ! ! !」と思いました。 激しい痛みがさらに襲ってきます。 出血もひどいです。
電気が走っているようなビリビリ感も感じています。
ピエールは慌てて左手をかばいながら、その場から逃げ出しました。
どうにか味方のいる安全な場所を見つけることができ、一生懸命止血しようとしました。
けれど混乱していてうまく布を巻けません。 左腕の体温がだんだん下がってくるのを感じています。
血が止まりません。 あせりと痛みの中で 「死ぬかもしれない」 と思いました。
その時、友人が駆けつけ止血をしてくれました。 彼の名前は「ジャン」と浮かんできました。
止血し終わると涙があふれてきました。 左手を失った悲しみと、もう戦うことはできない悔しさと怒りでどうしようもなくなりました。 拳を地面に叩きつけて自分を呪いました。
また場面が進みます。
腕を切られてから数日経ったようです。 ピエールは運良く血が止まり、命の危険は回避されました。
でも、戦いはまだまだ続いているようです。
味方の陣地にいるようですが、味方が次々と食い止めようと走っていきます。
目の前まで攻めてきているようです。 けれど、ピエールは逃げようとせず、むしろこんな体で生きなければならないのなら、 いっそのこと今殺してくれと思っています。
私の意識はピエールの少し上から見ている状態です。 頭を垂れて、まるで生きた屍のようです。
国のために一生懸命に戦っていたピエールとは程遠く感じられました。
確かに腕はなくしてしまったけれど、たくさんの人が亡くなる状況の中で運良く助かったのに、どうして死にたいと思うのだろう?
( 前世の自分であるけれど、第3者的にピエールを見ていました)
何もかも諦めてしまったピエールを助けてくれた友人が気づき、荒々しくピエールを引き摺って行きました。 友人は、ピエールの無様な姿に怒りながら 「生きろ !」 と叫んでいます。
彼の顔を見ると、彼の関係性が浮かんできました。
彼とは戦の中で知り合って仲良くなり、お互いの家族や恋人のこと、そして理想の生き方や死に方を語り合ったようです。
でも、肝心のピエールは自分の足で歩くこともなく、自分の殻に閉じこもっているようでした。
現在の私はピエールより も友人の気持ちの方が伝わってきました。
友人はピエールに対して怒っています。 「おまえが諦めるなっていったんだろ ! ! !しっかりしろよ ! !」 いつ死ぬかも知れない状況で、ピエールの存在が、彼にとって助けになっていたようです。
現在の私の方がなんだか申し訳ないような気持ちになりました。
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