vor.37 ピエールとアンジェラ ③
左手首を切られた戦から、また場面が変わりました。 どうやら自分の町へ帰ってきたようです。
友人と命からがら逃げてきたようです。 目の前にアンジェラがいます。
彼女は私の手首がなくなっていることにすぐに気がつきました。 彼女は泣き出します。
ピエールは何とも言えない気持ちで、無様な姿を愛する人に見られてしまった悲しさと もう自分は戦えない・・・何の価値のない男になってしまった悔しさでいたたまれなくなりました。
彼女は心配して気遣いますが、ピエールは一言も話すことができませんでした。
さらに3ヶ月後の場面に変わります。 ピエールはすっかり変わってしまいました。
アンジェラも寄せつけず、朝から晩までずっと一人で外に居続けました。
まるで自分の存在を消したいというように、家族さえ顔を合わすことを避けていました。
彼の心の中は真っ暗闇です。 現在の私は彼の心を感じたいと思いました。
すると今まで上から見下ろしていた状態でしたが、いつのまにか意識が彼の中に入っていきました。
ピエールは自分を呪っています。 自分なんて生きていている価値がないと悲観しながら思っています。 その時代の価値観は、どうやって名誉ある死を遂げるのかに重点を置いているようでした。
戦死は名誉ある死で、必ず天国に行くと言い伝えられていました。
負傷した者が戻って生き残るなんて、一族の恥であり、臆病者のレッテルを張られてしまいます。
人一倍プライドが高いピエールは、その状態が耐え難く苦しいのです。
何の価値のない人間だと苦しんでいるさまは、うつ状態だった過去の私とタブリました。
ピエールの方が何倍も苦しんだとは思いますが、 誰にも見向きのされない、生きる価値のないと同じような気持ちを持っていることが不思議でした。
ピエールの切断された左手は、傷口が塞がって、骨が突出したように薄く肉がついている状態です。
度々、傷口が疼いて傷みます。
この痛みも私の左手首のこぶの痛みと似ているのに気がつきました。
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