vor.38 ピエールとアンジェラ ④

自分を呪うと、周りの人たちからどんな言葉をかけてもらおうが、

全くピエールの耳に届かなくなりました。 

アンジェラは根気よくピエールに寄り添い勇気づけてくれました。  

彼女の愛情はとてもとても深いものでした。  

本当の彼女の思いは、例え抜け殻のようになったピエールだとしても側に居て生き続けてほしかったようです。 けれど、ピエールの生き方を優先してくれました。 

「今死んでいるように生きるよりも戦って死になさい !」 彼女はピエールに言い放ちました。 

抜け殻になったピエールに再び戦いの意欲がわきました。  

「屈辱の中の生」よりも「戦いの中の生」を見出しました。 

左手の失ったピエールは、左手を盾で固定して戦うしかありませんでした。 

盾に受ける衝撃の度に鋭い痛みを感じ、幾度も出血しました。 

けれど、ピエールは訓練に没頭します。男として生きる価値観が彼を支えていました。 

戦いは何年間かずっと続いています。 

毎日戦うというものでもなく、1ヶ月間冷戦状態ということもありました。 

ようやくピエールが戦に戻る日が近づいて来ました。 

潔く戦って国のために死のうと決意しています。 

アンジェラの気持ちも同じだと思っていたのですが、

彼女の抑えていた気持ちがついに爆発しました。  

「あなたはもう闘える体じゃない ! なぜ戦に戻ろうとするの? なぜ命を粗末にするの? 戦って死ぬことがそんなに価値のあることなの?」 彼女はとても取り乱しました。  

もうピエールは生きて帰ってこれないと感じているようです。 

その時初めて彼女の本当の気持ちに気づくことができたのですが、男としての価値観を貫くことしかできませんでした。 

たくさんの親しい人が亡くなって、その敵を討たなくてはならない。国を守らなければならないという責任感もありました。 

また場面が変わります。 

 戦場で戦っているようです。 われ先へと先頭になって戦っています。  

ピエールの頭の中には、敵を何人倒せば国を守れることができるか、どうしたら名誉ある死を遂げられるかということしかありません。生への執着がまったくありませんでした。  

たくさんの人を殺さなければならない、むなしさや悲しみが常にあります。 

その気持ちにとらわれないように、必死に感じないようにしています。 

 朝方の場面に移りました。 少数の仲間たちと奇襲作戦に出ようとしています。

敵の陣営の中にようやく入り込めました。 テントの中にいる指揮官を狙おうとしています。 

仲間たちは覚悟はできているようです。 一斉に攻撃を仕掛けます。 

けれど、すぐにたくさんの敵に囲まれて仲間とは散り散りになりました。 作戦は失敗です。 

山の上の岩がゴツゴツしている場所まで逃げています。 追っ手が迫っています。 

岩に足がとられうまく走れません。 一人の敵に倒されました。 敵は剣を振り上げます。 

太陽の逆光でまぶしくて目がくらみました。 その瞬間、心臓を貫かれました。 即死でした。

ピエールは不思議とやっと終わったんだと思っていました。

魂がピエールの体から離れて、すぐにピエールは自分の人生を振り返り、過ちに気づくことができました。 

ピエールの人生は戦いが中心で、どうやって生きるかよりも、どうやって死ぬかに重点を置いていた。 名誉ある死にとらわれすぎていた。 もっと違った人生を選ぶべきだった。 

「生きる」人生を選ぶべきだった。 左手を失ったのはそれに気がつくためのものだった。  

国のため、死んだ仲間のためではなく、守るべき家族や愛する人をどうやって守る続けて生きるのかがピエールの人生の目的だった。 ピエールだけではなく、戦う男たちはみんな勘違いをしていた。

戦うことが本当の守ることではない。 先に戦死した方がどれほど楽であったか・・・  

残った女子供たちが、どれほど苦労しなければいけなかったかを分かっていなかった。 

戦うことに酔いしれて楽な道を取ったということだけだった。 

気づかなければいけないチャンスに、ピエールは死の影に生きる目的を見つけてしまった。  

本当の意味で自分の命を大切にしていなかった。 

そして自分のみの価値観に突っ走って、周りをよく見ていないことも分かってきた。 

ピエールが気がつくと、現在の私も同時に気がつくことがありました。 

左手のこぶが出て痛い時は、どこか一人だけで物事を見ていて、周りの意見を全く耳を傾けていない 自分がいたことに気がつきました。 

ピエールの状況と全く同じだということに気づきました。 

 アンジェラは現在のAさんでした。

彼女の深い悲しみと愛情がようやく死んでから分かりました。 

彼女はピエールが死ぬくらいだったら、自分が死んだほうがましだと思っていました。 

ピエールの死を意識すると、身が引き裂かれるような思いをしていたようです。  

けれど、彼女はピエールの誇りを守ってくれました。「死んで生きるより、戦って死になさい」とピエールに言った言葉は、彼女を死ぬまで苦しめていました。 

ピエールを死に至らしめたのは自分だと思っていました。  

前回の前世でも、私のほうが早く死に、残される悲しみをAさんに味あわせてしまいました。  

私はAさんの中に、もしかしたら死に別れの悲しみが、いまだに残っているのかもしれないと感じていました。 

アンジェラを大切にしたい。 もっともっと愛してあげたい。 今度はそばにいて見守ってあげたい。 ピエールと私も同じ気持ちです。 ピエールは私にメッセージを伝えてくれました。 

「僕の人生では選択を間違えてしまった。僕からあなたにあげられる物は、何かに立ち向かう勇気。 恐がらないで向かう勇気。これがあればあなたはもっと強くなれる。」  

ピエールが死んで魂の状態になった時、途端にものすごく視野が広がり、 現在の私が、ピエールの生まれ変わりだということにもすぐに気づいてくれたようでした。 

そして、ピエールの周りの人たちのその当時の気持ちも不思議と手に取るように分かったようです。

さらに自分の人生の過ちも気づき、また現在の私に対してもメッセージを伝えてくれました。

私の目には、目の前に立っているピエールが、戦いに価値を置いていたピエールとはまったく違うように見えました。 すべてを理解したように感じました。 

その後、左手首の痛みとなっているエネルギーを外し、修復していきました。  

その直後、不思議とスーッと痛みが引いていきました。  

ピエールの前世療法をしてから何年も経ちますが、こぶはあれから一度も出ず痛みもまったくなくなりました。  

私の何かに打ち込むと全く周りが見えなくなるという癖もだんだん薄れ、行動する前に一度周りを見ることができ、いろんな見方や冷静に判断できるようになってきました。 

そしてピエールから受け取った勇気も、私の中に浸透して私の一部になった気がします。

何千年前(?)のピエールが私の中で、今も私の一部として生きている・・・そう感じています。 

そしてツインソウルメイトであるAさんとの前世はまだまだこれからいくつか体験していくのでした。 

ココロの木

山梨県南アルプス市で前世療法、ソウルメイトセラピー、インナーチャイルドなどの自分探しや心のケアができる相談セラピーをしています。

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